SWATCH / WEIGHT AND SEE

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スウォッチの1997年発売のWEIGHT AND SEEです。ベルトからケース、風防までが同じダークウォームグレーメタリック色で統一されており、四角い時刻表示窓のみが右側にある、いわゆるメカデジで、上の画像で10:01になります。私は発売当時はこの時計の存在を知らなかったのですが、先日このモデルを見つけ、「おぉー、スウォッチでメカデジはいくつかあるけど、これは初めて見た、カッコイイ」と入手しました。で、このモデルの購入に至った理由はもう1つあり、通常のメカデジは表示窓は左側にあるのですが、このモデルは右側にあるという、メカデジにしては非常に特異なものだったから、というのもあります。たかが窓の位置ですが、普通に考えると専用のムーブでも起こさない限り、通常のアナログ針を円盤に置き換えただけのメカデジで右側に窓を設け普通に「時:分」表示をさせるのは物理的に不可能のはずで、今回その謎を解きたいという思いもあり入手に至りました。(詳細は後半に記載します。)

ということで、本体に関してはその四角い窓以外は何も無い、いわゆるレギュラーなスウォッチな形をしています。この「窓以外何もしてない」「この窓だけで勝負じゃ!」という潔さが良いです。

下の画像で2時ちょうどな感じですが、分の表示は1分ごとに表記されているので、メカデジにしては今何分かが明確に分かります。しかし字はかなり小さいので、よーく見ないと分かりません。ので、ぱっと見ではたいていのメカデジ並の「今2時位、かな。」位しか分かりません^ ^

腕に巻いた状態。重さはベルト含めて17gしかないので、ほとんど腕に巻いてる気がしません。先日入手したISOTOPEの時計の約1/8の重さです。

背面も至って普通のスウォッチな感じです。

ということで、本体はシンプルなので記載することはこの位しかないので、以下、この時計の「右側の窓」について解説します。

まずは腕時計の針の構造から(長くなりそうですみません)。時計の針の構造は下の画像の様に下から時針(短針)、分針(長針)、秒針、の順番に積み重なっており、ほとんどのアナログ時計はこの順番で針が積み重ねって組まれています。

で、その針の取り付くセンターの軸は簡単に描くと下の画像の様になっています。まずは太い時針(短針)軸の円筒(赤い部分)があり、その中から分針(長針)軸(緑色の部分)が出ており、さらにその中から秒針軸(青色)が伸びていて、それぞれの筒に針が上から圧入されて固定されています。この様な構造なので、時針と分針の上下位置を入れ替える様な事はできません。

で、メカデジは針を円盤に置き換えていますので、この構造で円盤を組むと以下の様になります。赤い時針軸に時表示の円盤、緑の分針軸に分表示の円盤、青い秒針軸に秒の円盤が順に組まれていきます。円盤の大きさは重ねていって下の円盤の数字を隠さない様に、上に行くほど小さくなります。

で、組んだ状態を上面から見るとこんなになります。この状態で「左側」に四角い窓を設け(青い線の部分)「時:分:秒」と時刻をデジタル表示するというのが一般的なメカデジの構造です。

下の画像はメカデジの例です。左はSORNAのメカデジ。右はSICURAのメカデジ(秒針はありません)をばらした状態。針を円盤に置き換えたメカデジは大体こんな感じです。

で、ここで、今回のスウォッチのメカデジを見てみると、思いっきり右側に窓があります。

これまでの構造のままで右に窓をやろうとすると、下の様になってしまいます。円盤の機能は変えられないので、左側の窓の時の様に「時:分:秒」の表示はできず「秒:分:時」の表示となってしまいます。世の中にはこの順番の表示でよしとして右側に窓があるメカデジもありますが、今回のスウォッチのモデルは秒はありませんが、「時:分」の順番での表示を保っています。分の数字を時の外側に持っていこうと分の円盤を大きくすると下にある時の円盤が隠れて見えなくなってしまいますし、かと言って円盤の上下入れ替えはできませんし・・・さてこれは一体どうやっているのでしょう?

この表示の為に時針軸と分針軸の機能を入れ替えた専用のムーブを起こしたのでしょうか?もしそうだったらスウォッチすごいです。もしくはムーブはレギュラースウォッチのままで何かミラクルな仕組みで分と時を入れ替えて表示いるのでしょうか??クオーツスウォッチはバラせないので、ムーブや円盤を見るには破壊するしかないのですが、、、この時計は普通に今後も使用したいので破壊はしたくないので、窓をじっくり眺めてその秘密が解けないか、ルーペで見ていたら、、、ん!?なんか、分の細かい数字が微妙に浮いて見える・・・!しかもに分の小さい数字の右脇に円盤の白い端面らしきものが見える・・・!!

そう、なんと分表示の円盤を透明プラスチックで作ることで、この表示を成り立たせていたのでした。(ばらしてみた訳ではないので、あくまで予想ですが、おそらくそうでしょう)図で描くと下の様です。
時と分の円盤の積み重ねる順番はこれまで通りですが、時表示円盤の数字を内側にオフセットして印刷し、その上に透明プラスチック円盤に分の細かい数字を印刷した分の円盤を重ねることにより、透明の円盤から時表示の数字が透けて見え、「時:分」の順番を成り立たせていました。

組んだ状態を上からみたところです。これなら右側窓でも「時:分」表示ができますね・・・透明円盤すごい!透明円盤えらい!(ピタゴラスイッチのピタとゴラ風に)

謎も解けたとこで、ここでちょっと話がそれますが、同様に針の代わりに円盤を使用し、円盤上には数字ではなく針の代わりとなる「線」を配した時計として、ISSEY MIYAKEの吉岡徳仁さんのデザインしたTOという時計があるのですが(サイトはこちら)、下の画像の状態で時刻は10:08なんです。普通の時計の感覚で見ると1:51かと思われるのですが、これも上で説明した様な円盤の構造上、どうしてもこんな長針短針が入れ替わっちゃった様な状態になってしまってます。

時計の構造を知らずにこの時計のデザインをした時に、最初はきっと下の画像の様に、分針の円盤を外に、時針の円盤を内側にして、10:08は普通の時計の様にこう表示する、としたかったのだと思います。これができれば素直ですよね。

しかしながら、各針の回転軸の機能を入れ替えることはできない=円盤の機能の入れ替えはできないので、かと言って専用のムーブを起こすほどコストもかけられないので、メカデジ同様最大の円盤は時(短針)、次の円盤は分(長針)とせざるを得ず、長針短針が入れ替わった様な見えになってしまい、10:08が下の様になってしまっているかと思われます。これはわかりにくいし慣れが必要ですね。吉岡徳仁さんほどの大御所ともなると、安藤忠雄さんの「カッコイイけど住みにくい家」の、住み手は闘って住みこなす覚悟をしろ、みたいに、この時計もカッコよく作っておいたからあとは使い手が慣れろ、というスタンスなんでしょうかね。(マークニューソンデザインの時計の初代PODも同様のことが言えますが、あちらは針が線でなく点なので、まだマシな気はします。)TOのサイトには「ウオッチの形状や機能からではなく、素材そのものの選択からデザインをはじめ・・・」な記載がありますが、時計としての最低限の機能は保持した上で新しいことにチャレンジして頂きたいですね。新しい時刻表示としてこの時刻表示方法を推奨してる訳でも無なさそうなので、「構造上止むを得ずこうなってしまった」感が残念です。

ちなみに同様の円盤で針表示として理想的なのはZODIACのASTROGRAPHICですね。全てが透明円盤なので、円盤のレイヤーの順番に関係なく針の位置を通常の時計と同様なポジションに印刷できるので、通常の時計と同じ様に時刻を表示できています。下の画像で素直に10:08です。透明円盤すごい!透明円盤えらい!

・・・かなり話がそれましたが、スウォッチに話を戻しますと、スウォッチにはメカデジがあと2本存在します。下の画像右は1995年発売の6時位置に窓のあるSILVER PLATE、左は1997年発売の体重計を模したスタイルのCALORIESです。右のモデルは今でもヤフオクなどにちょくちょく出てきますが、よく見るとこのモデルも時を上に表示を成り立たせる為に今回のモデルと同様に分の円盤を透明円盤にしているかと思われます。

以上、かなり長くなりましたが、右側窓のスウォッチメカデジについて、でした。最後に、右側窓で「時:分」表示のできている時計が他にないか、検索してみたら、スウォッチ以外で1本見つけました。これはNIXONのメカデジのROTOLOGで結構人気のあったモデルですね。当時はそんなこと気にしてませんでしたが、これも多分同様のことをしているかと思われます。こんなことをしてるのはスウォッチだけかと思ったのですが、他社でも見つけてしまい、ちと残念。。もっと検索するとビンテージ なメカデジで同様のものはあるかもですが。。スウォッチはこの構造のパテントとか取ってないんですかね?

その他の右窓「時:分」モデルは専用のムーブを起こしたこちらでご紹介したDERBYの電磁テンプメカデジのモデルですね。分の10の位と1の位にそれぞれ専用の円盤を設け、分も大きく表示できている、デザイン的にも機構的にもキングオブメカデジな時計かと思います。

以上、長くなりましたが、スウォッチのメカデジについてのご紹介とその構造について、でした。これら以外に「時:分」表示をできている右窓メカデジをご存知の方がいらっしゃいましたらお教え頂けると助かります。(2022.6.28.)

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