世界初の録音機能を搭載した、1983年発売のセイコーのボイスノートです。8秒もしくはより高音質の4秒の録音をすることができます。前面のRECボタンを押すと録音待機状態になり、音声に反応して録音スタートします。ハコハコした左右非対称なケースデザインで、それに合わせてベルトも左右非対称になっています。四角いケースはカーボンファイバー入りの強化プラスチック製、ベルトはステンにブラッククロームメッキ+フッ素樹脂コーティンングがされています。
発売当時は「せっかくのエポックメイキングなモデルなのに、なんとも垢抜けないダサいデザインだなぁ。」と思っていたのですが、最近になってようやくそのダサさが「いい味」になってきた気がします。
この板金をビス止めした試作品っぽいディテールのダサさも今腕に巻く分には、ダサカッコイイ、ムカシデジタルガジェットな腕時計としてとてもよいかと思います。
1983年4月20日発表当時のプレスリリースにはこの時計の使用例として、「贈る言葉をそえて気のきいたプレゼントとして」とあります。そんな言葉を録音されたらその上に上書き録音なんてすること出来なさそうですね。
デッドストック状態ですので照明用のライトも健在です。ELバックライトでないムギ球による照明がノスタルジックです。そう言えば昔、映画ゴーストバスターズでも使用されてましたね。
ビス止めの背蓋を開けた状態。SR1130Wを2つ使います。
取説です。
取説の機能説明。録音した音声をアラームに使用することも出来ます。
録音の仕方の説明。「※マイク(兼スピーカー)から5cm程度離れた位置で普通に話してください。」とあります。シチズンのボイスメモ(こちら)よりは適切な説明文ですね。
ということで、シチズンのボイスメモとのツーショット。非常に対照的なデザインです。
斜視。発売はシチズンの方が後です。
反対側からもう一枚。今見るとシチズンのレイアウトはセイコー の顔風デジタルのH239-5020っぽいですね。
手に取った状態。80年代はほんと国産デジタル時計が元気で楽しかったです。
1997年に私が出版した本のページに置いてのカット。紙からwebへと、媒体は変わっても同じことをずーっとしてる気がますw
このボイスノートのプレスリリースには、
『セイコーは最先端のメカトロニクス技術を駆使して腕時計の情報機器化に取り組んでおり、すでに映像情報への対応機器「セイコーテレビウオッチ」と文字情報への対応機器「セイコーレターメモ112」(アルファベットや数字を112文字まで自由に入力、再生可能)を昨年発売しておりますが、今回の「ボイスノート」の完成によって、音声、オーディオ情報への対応機器も揃ったことにまります。』
とあり、また同83年11月28日発表のUC-2000のプレスリリースには、
『この様にSEIKO UC-2000 シリーズはパーソナルな携帯用情報機器の本格的幕開けを告げる商品といえましょう。』
とあります。「腕時計の情報機器化」、「パーソナルな携帯用情報機器の本格的幕開け」・・・80年代前半はデジタル時計にものすごい期待と夢があった気がします。しかし幕開けはしたものの、その後国産デジタルの発展は急速に沈静化、終息化していってしまい、その発展はたった数年で幕を閉じてしまいました。日本ならではの独自の腕時計の進化で非常に面白く期待していたのですが・・・最近では日本がつまらなくなってしまった分、その役目はヘルスケアというな新たな役目もこなしながらApple Watchが一手に引き受けてくれている様な気がします。
以上、セイコーの世界初の録音できるデジタル時計のボイスノートのご紹介でした。