NASA SPINOFF / SPACE MOVE

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これはアメリカ航空宇宙局「NASA」のジェミニ11号、アポロ12号のキャプテン、リチャード・F・ゴードンJr.氏が代表取締役社長を務める「SPACE AGE AMERICA INC」の協力のもと、2003年に世界限定1000本(白黒文字板各500本ずつ)生産された、製造はセイコーによるクオーツクロノグラフです。

発売当時の価格は16万円だったのですが、在庫処分として2年程前までなんと2万円で販売され、私もこの時計の持つストーリーとデザインに惚れ込み、購入するだけでなく旧ブログにて販売のお手伝いもさせて頂いてました。2万円での在庫処分品は2019年6月に完売となり、現在では入手不可能な幻のクロノとなっています。(在庫処分時に安く入手しebayですごい価格で売っている転売ヤー的な方による出品などはされていますが、現状ではそういった方から買うしかありません。今思うに、海外からの注文にかなり手間をかけて送っていたものの多くは残念ながらこういった転売ヤー宛だったのかもしれません。。)

で、まずはこの時計の素性から。(全ては旧ブログにアップしていた情報ですが、改めてここにまとめてアップします。)この時計はNASAのスピンオフ商品の1つとして発売され、文字板6時位置のクロノの目の外周に赤文字で『SPACE SHUTTLE TILE』と表記がある様に、何と文字板にはスペースシャトル・エンデバーで実際に使用された耐熱タイルが使用されています。(文字板に使用されているタイルは、1992年9月12日にSTS47プロジェクトで地球から宇宙に飛び立ってから宇宙空間を7日と22時間30分飛行し、毛利衛さんがベイロード・スペシャリストとして搭乗して様々な実験を行った、スペースシャトル計画5機目のオービタ「エンデバー」シャトルのタイルそのものです。実際は使用されたタイルを削りペースト状にして塗料に混ぜ込み文字板に塗装している様です。)

いわゆるオメガのスピードマスターの様に「宇宙に行った物と同じ商品」ではなく、「実際に宇宙空間に行き、大気圏突入の高温にさらされた耐熱タイルを使用している商品」という、市販されているスピマスや宇宙をイメージしましたなどと言うその辺の「宇宙っぽいもの」とは別ステージの、宇宙に思いを馳せるにはこの上ない素性を持つ腕時計になっています。しかもそれがたったの2万円。初めて見つけた時はしびれました。

で、ディティールのご紹介の前に、もう一つあるこの時計の持つ魅力的なストーリーついてご紹介します。以下はこの時計を見つけた当時の旧ブログからの転載になります。

ここから転載(初出時2017年7月1日。一部加筆修正してます。)ーーーーーーーーーー

・・・そもそも何故にこの時計を知ったかと言いますと、メルカリで「セイコー クロノグラフ」で検索をかけた時に見つけたのでした。検索結果で色々並ぶクロノグラフの中で、今まで見たことのない非常に良さげなこの時計が何本も出てきて「お?」となり、その出品者、「毎日が激安の店」さんを見ると(下の画像)、なんと大量にこの時計を出品してるではないですか。

この「毎日が激安の店」さんは江東区にあるファッション雑貨を色々激安しているお店らしく、しかもどうもそのお店が直々にNASAの許諾を得て作った時計の様で、何故にメジャーな時計メーカー等でなく、一激安ショップがその様な事ができるのか??説明文を読むとNASA公式であることは間違いない様ですが、文字盤にあるNASAのロゴはいわゆるワームロゴっぽいのですが、なんかちょっと違ってますし、発売から10年以上経過しているのにGoogle等でいくら検索をかけてもこのお店の画像やサイトしかヒットせず、ネット情報もほとんどゼロ、だけどぱっと見の画像では時計としてはかなり出来が良さそう、だけどタキメーターが何故か回転する、、、何の意味がっ!?、しかも定価の1/8価格って・・・非常に良さげな時計なんだけど、謎が多すぎる!国産クロノ好きとしてはこれはもうポチって確認するしかないだろう、ということで、初メルカリでポチろうかとも思ったのですが、聞きたいことがいっぱいあったので、これは直接販売している方に聞きに行くしか無い!と、江東区の砂町銀座という商店街にある「毎日が激安の店」さんまでアポをとり会社を休んで行ってきました。

で、まずこちらが都営新宿線西大島駅から徒歩15分位のところにある砂町銀座です。細い路地なのですが、平日の午前中にも関わらず、かなりの人で賑わってます。行列ができてる店も多々ありました。毎日の食材から日用雑貨まで、安売りをしている店が軒を連ねている様です。

で、5分程歩くとNASA時計発祥の地「毎日が激安の店」さんの店舗がありました。こ、ここかー!

店先からあふれんばかりに激安な商品が並びます。

店内です。必要最低限の什器で商品がたくさん並んでいます。

ダンボール箱にも安売り商品がたくさん。店内、NASA感はゼロですw 本当に時計が置いてあるのかちょっと不安になります。。

で、店奥に入っていくとレジ横の激安財布の並ぶカゴの中にいました!A4サイズ程の説明書きも添えられて、財布の波の間に埋れていました。

拡大。やはりこのお店の中においてはかなりの唐突感ですw 一応盗難防止用にテグスで結ばれてました。ベルトに巻かれた紙に書いてある581はシリアルナンバーです。

で、社長(店長)さんにお会いし、早速白黒2バージョンを出して頂きました。

まずは黒バージョン。画像で想像してたよりもかなり出来が良いです。ベルトもステンのムクでかなりの重量感です。

白バージョン。最近は白バージョンが人気の様です。クロノの目の存在感は薄れますが、こちらも良いです。

2本並べた状態。どっちを買おうか、かなり悩みます。

で、社長さんと話していると、何やら奥からトランクを出してきてくれて、おもむろにトランクオープン。中から出てきたのは、スペースシャトルの大きな画像と、、、

なんと、スペースシャトルの耐熱タイルの現物が出てきてびっくり。こんなところでこんなものが見れるとは!1992年に宇宙空間を7日と22時間30分飛行したスペースシャトル、エンデバー(毛利衛さんも搭乗)に実際使用されたタイルだそうです。放射能検査はしてあるので大丈夫とのこと。

さらに白い耐熱タイルも!現物の手触りは少し粉っぽく、石膏に近いのですが、ものすごく軽いです。石膏をものすごい高密度発泡したかの様です。この塊を削り、文字板の塗料に使用していたのですね。

さらに当時の資料のファイルも見せて頂きました。販促用の画像等がたくさんファイリングされていたのですが、当時のデザイン画もありました。クロノの目は最初はデイトナ風のリング状だったんですね。ディティールはかなり製品と異なりますが、最終製品の方がよりカッコよくなっていると思います。

で、気になっていた文字板にあるNASAの文字、オリジナルのワームロゴとは異なっていることについて伺うと、文字板にあるロゴはNASA SPINOFF商品のオフィシャルのマークの文字がこうなっているから、とのことで、それも資料を見せて頂けました。下の画像、NASA SPINOFF商品用のマークの清刷りです。そもそもワームロゴ自体、時計の発売時の2003年には既に使用されてませんでしたね。(エンデバーの機体にも使用されていません)すみません。。

レジでお話を伺っている途中には何度もお客さんが訪れてました。(商売の邪魔をしてしまい、すみませんでした。)で、そもそも何故にこちらのお店がこんなNASAとの仕事ができたのか?を聞いてみたところ、当時NASAに知り合いの方が勤めていて、NASAのSPIN OFF商品を展開するにあたり、時計の話があがり、メンバーとこのデザインをし、製造をセイコーに依頼し、製品化にこぎつけたとのことです。NASAの商品を扱うということはセキュリティー的にもかなり厳しく、社長の身辺情報をCIAに調べられたり、販促に使う画像の規約などもかなり厳しかった様です。

ということで、この時計にまつわるエピソード話も色々聞け、ブログにアップすることも承諾を頂き、最後に結局黒モデル1本お買い上げをさせて頂き帰ってきました。(後に結局白モデルも購入しました)お忙しい中、丁寧に説明して下さり、社長さん、本当にありがとうございました。様々なエピソードを伺い、よりこの時計に愛着が湧く様になりました。私も以前にSYD MEAD氏のオフィシャル時計を作ったりしましたが、相手がNASAとなるとその大変さは私の比ではなかったかと思われます。本当にご苦労様でした。

転載ここまでーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ということで、まとめますと、この宇宙時計(と書くとウルトラセブンの12話の様ですが)は、

・NASA公認のスピンオフ商品で文字板には実際に宇宙に行ったスペースシャトルの耐熱タイルを使用し、

・その企画、デザインはいわゆる大手の時計メーカーなどでなく日本の一激安ショップさんによるもので、

・製造はセイコーと、全ては純国産で、

・しかもそのスペースシャトルの様な白黒ハイコントラストなデザインが非常にまともでカッコ良く、

・それが定価16万円のところ、たったの2万円で買える!

という、しびれる要素てんこ盛りな時計なのでした。この時計に惚れ込んだ私はこんなカッコイイ時計はもっと広く周知されるべきだと思い、旧ブログで販売のお手伝いをさせて頂いたり、友人に宣伝し売りまくっていたりしてました。下は会社で売っていた時のカットです。当時は怪しい時計商人の様になってました。(某POWER何とか等の時計雑誌にも記事のネタとして提案したりしたのですが、どうも残念ながら響かなかった様です。)

・・・と、ここまでで既にかなり長くなってしまいましたが、以下、やっと時計のディティールについてご紹介していきます。

まずは白モデルから。(ベルトはNATOベルトに交換してあります。)耐熱タイルを使用しているという価値を抜きにしても、純粋にクロノグラフとして非常にカッコイイです。

ベゼルにはタキメーターとテレメーター、インナーベゼルには1/100分割のデシマルメーターがあり(回転しません)、クロノの目は上から1/10秒計(2秒で1回転します)、左60分積算計、下クロノの秒針で、中央の赤い針は通常時刻の秒針で常に動いています。(画像はどれも12時位置にきた時に撮影してます。)センターの秒針が通常秒針にしてしまっているのがクロノとしては残念なポイントではありますが(セイコーの既製のこのムーブを使用せざるを得ず、やむ無しだったのか)、それを補うかの様にタキメーターのベゼルは回転します。通常のクロノでは回転するタキメーターなど意味なしですが、こういったセンターの針を通常の秒針として使用しているクロノの場合はダイバーズウォッチのそれの様に、計測開始時に回転させて秒針にタキメーターの60を合わせれば、簡易的ではありますがいつでもタキメーター計測可能となるという、こういう秒針の場合には回転タキメーターには意味があった、という事に入手してから気づきました。

NASA SPINOFFの青いバッジが誇らしげです。この表記はNASAの宇宙技術を応用した商品(SPIN OFF製品)に限り承認されるものであり、米国のジョンソンスペースセンター・スミソニアン博物館で販売する事を認められた商品にのみ付けることができます。

白文字版に白目というのも清潔感があって良いです。

腕に巻いた状態。大きめですね。カッコイイ。

次は黒モデル。黒もいわゆるクロノっぽくカッコイイです。

この配色だとクロノの3つ目がはっきりします。

カッコイイ。(カッコイイとしびれるだけの連呼ですみません)

クロノのプッシュボタンも極めてシンプルで良いです。リューズはネジ込み式で時計としては200m防水で耐磁性能もあります。

腕に巻いた状態。

屋外でもう一枚。

ベルトのバックル部、開いた状態のここにもオリジナルの刻印があり、こだわりまくってます。

裏蓋には次期スペースシャトルで計画されていたX-33のイラストの刻印と シリアルナンバーが刻印されています。

裏蓋を開けた状態。ムブメントはVD57でバッテリーはSR920SWです。

裏蓋の裏面にはこの様なシールが貼ってありました。クロノの針の修正方法がざっくり記載されていますが、バッテリー交換後のクロノの針位置の修正はリューズを2段引き、上のプッシュボタンでクロノの上の目(1/10秒計)の針の修正、下のボタンでクロノの下の目(秒針)の針の修正をします。左のクロノの目(60分積算計)の修正は下のボタンを押しっぱにすると下の目の針が早送りし、1回転するごとに連動して左の針が1目盛り分進みますので、ひたすら押し続けて合わせます。(最初この左の目の針の修正方法が分からず悩みました。)

ムーブ拡大。AC接点の場所やオシドリの位置が刻印されています。

リューズを抜いてムーブを出した状態。非常に重厚なケースです。

文字板拡大。

更に拡大。よく見ると文字板の塗装には黒い粒々があります。耐熱タイルの成分ですかね?

続きましてパッケージです。

開けた状態。ラミネート加工されたシリアルナンバー入りの証明書、取説が同梱されています。

蓋の裏面には次期スペースシャトルとして計画されていたX-33のCGと、NASA SPINOFF商品を扱うSPACE AGE AMERICA INC.の代表取締役社長(元ジェミニ11号、アポロ12号のキャプテン)のリチャード・F・ゴードンJr.さんのサイン付き写真があります。何故に実際に耐熱タイルが使用されたエンデバーの写真でなく、X-33なのか?は「(これからの21世紀に向けたNASA SPINOFF商品として)夢があるほうが良いでしょ?」ということでこの画像を使用したそうです。

時計の横にはこの時計に関する解説があります。

箱にはこの様にヒンジのない、上蓋が外れるタイプもありました。

どちらもNATOベルトに変えてのツーショット。

最後に、他の国産クロノと一緒にいろいろ撮影もしてみました。まずは同様に白い文字板のクオーツクロノのSEIKO 7A28-7270、ボンドウオッチ(こちらでご紹介してます。)と。そう言えばロジャームーアも宇宙に行ってましたね。

更に機械式クロノのセイコー6138-8000(こちらでご紹介してます)も一緒に。これは目が黒いですね。

セイコーの7A28-7010の復刻っぽい逆輸入白文字板クオーツクロノと。これはこれでオレンジの差し色が効いてて良いです。

シチズンですが、白文字板、白目、黒タキメーターベゼルと要素はかなり似ています。

7A38-7270のケースを7A38-706Aのものに交換したモデルと。(こちらでご紹介してます。)

7A28-702A(左。こちらでご紹介)と6138-8001(右。こちらでご紹介)と。

最後にまとめてセイコークロノ達。1970〜80年代の6138、7A28、7A38系、それらから20年程して2000年代初頭に誕生した宇宙時計のSPACE MOVE・・・現在はそれから更に20年ほど経過していますので、国産好きな私としてはそろそろセイコーさんからこれらに継ぐ、よりカッコイイクロノの爆誕を期待しています。

以上、かなり長くなりましたが、NASA SPIN OFF商品のSPACE MOVEのご紹介でした。(2021.2.6.)

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