全てにおいて怪しい、エルメスの(かどうかの真贋も含めて怪しい)時計です。(2020.10.28.追記:エルメスの時計であることはほぼないであろう、というが確認できました。ページ最下部に追記してます。)文字板上半分で時刻表示をする手巻きの時計で、年代も不明ですがおそらく70年代よりは前かと思われます。
ご覧の様に長針、短針とも上下に長さ違いで伸びており、時刻を表示する円弧状の目盛りが文字板上半分に印刷されています。
まずは時刻確認方法について。時刻は上半分の目盛りの針の指し示すところを読む事により分かります。上の画像で、10時8分(もうすぐ9分)、下の画像で10時5分となります。
別の画像でもう一度。短い方の時針が10と11の間を指しているので10時、長い分針が40を指しているので40分となります。基本上半分だけしか使わないので、下半分はマスクされていても大丈夫です。以前にご紹介しましたSANDOZのDuplexがまさにそういう構成になっています。
で、見た目はレトログラード風なのですが、機械としては普通の機械式の時計と同じですので、運針も普通の時計と変わりません。ですので、下の画像の様に赤く塗られたそれぞれの針の「長い方」だけを見れば現在の時刻を普通に10:40を表示していることが分かります。文字板の目盛りを見ずに常に針の長い方を見れば普通の時計と同じ様に時刻を知ることも可能ですが、かなり難易度が高いです。
しかし、ムーブメントはそのままに、針の後端を伸ばすだけで文字板の上半分だけで時刻表示をすることができるということを発明したのはどこの方なのでしょうね?現在はこの構成を用いたクオーツ時計等も多々出てきています。XERICの時計とか、VOID WATCHとか。
インスタにアップした動画です。時刻の見方はこちらをご覧頂くのが一番分かりやすいかと思います。
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針は明るい光源下だとかなり青いことが分かります。
裏蓋にはシリアルナンバーらしきものが刻印されているのみでした。
で、この時計のHERMESブランドの怪しさについて、ですが、(2020.10.28.追記:エルメスの時計であることはほぼないであろう、というが確認できました。ページ最下部に追記してます。)まずはこの文字板、あまりに綺麗なので、リダンされたものであることは確実かと思います。で6時位置に印刷されたエルメスのロゴもそのリダン時に入れられたものかと思われますが、そもそもエルメスがこんな変態時計を作っていたのかも不明です。オフィシャルのサイトなどを見ても見つけることはできず、贋作の多いラグジュアリーなブランドなだけにその真贋は不明です。このケースすら妙に綺麗でモダンな形をしているので、オリジナルか定かではありませんが、ムーブメントと裏蓋の裏には下の画像の様に一応HERMESの刻印はありました。(その刻印も後からいくらでも彫ることは出来ますが。私的にはここでWittnauerとかSANDOZとかの刻印が出てきてくれてた方が「やっぱそうかー!」と喜んだかと思われます^ ^ )
で、数年前のこの時計入手時はいくらweb検索しても出てこなかったのですが、最近になってebayには下の画像の様な、ほぼ同じ時計が出てきたりしてました。説明には「Dial refinished」とありますので、それなりに経年劣化は見られるものの、これもリダン文字板の様です。ケースデザインも異なりますし・・・また、私のものとほぼ同じで文字板の下半分に穴を空け、スケルトン仕様にしたものなども出てきていますが、流石にそれはもう改造時計の域かと思われます。HERMESと印刷されたこれと同様の贋作が多く出回っていたのか、本当にエルメスはこんな変態時計を昔は作っていたけど、ケースの密閉性が悪く文字板の劣化が酷いので、現存するのはリダンされたものがほとんどなのか、単なる改造時計で高額販売目的でHERMESと印刷したものなのか・・・いろいろと謎の集大成の様な時計ですが、時刻表示手段と真贋の謎も含めて「とても怪しい時計」なので気に入ってます。^ ^
ということで、謎時計を腕に巻いた状態です。さて何時でしょう?
正解は5:37です。下は同様に上半分だけで時刻表示をするKLOKERSのKLOK-02とのツーショット。文字板の色調はこの画像が一番オリジナルに近いです。(やはり自然光下での撮影が一番良いですね。)
原理的には同じ時刻表示手段のSANDOZのDuplex(中央)とVOID WATCHESの時計(右)と。どちらも不要な文字板半分は隠しています。
手に取って正面から。HERMESロゴなど無くてもこのまま今売っていても十分いけると思うのですが、如何でしょう?
手に取って斜視。しかし古いのか新しいのかも分からないですね。
以上、全てにおいて怪しい時計のご紹介でした。この時計について情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらCONTACTのページからご連絡頂けると嬉しいです。
2020.10.28.追記・・・先日、某アンティークウォッチショップのEさんにこの時計のことを聞いてみたところ、これに使用されてるムーブはエボーシュ(EBAUCHES S.A.)の汎用ムーブで、まずエルメスがこんなムーブ使わないだろうし、機械へのHERMESの彫刻なんていくらでもできるからエルメスの時計だということはまずありえないだろうねw、とのことでした。
下の画像、左はEさんがストックで持っていた「ムーブは多分これと一緒だよ、あげるよ」と頂いたエボーシュのムーブ、右がこの怪しい時計のムーブです。加飾な部分はありませんが確かにこれとほぼ同じですね。
EBAUCHESのムーブの一覧より。多分上段中央のものであろうとのこと。
しかしエルメスじゃないにしても、この時計はEさんも初めて見るモデルの様で、この時計のオリジナルデザインはどこの何なのか?更に謎が深まりました。相変わらずこれと同じ様な文字板デザインでケース違い、秒針の有り無し、かなりビンテージな劣化をしたものなど、ぼちぼちebayなどにも出てきますし。。。もしかして針からオリジナルで起こしたどなたかの「創作時計」+高値で売っ払う為のエルメスロゴ、な感じですかね。。以上、この時計の謎が更に深まったことの追記でした。