1966年発売のシチズン初の電池で動く時計(電磁テンプ時計)のX8です。1960年代にこのスペーシーなデザイン、当時スペックと共にとても画期的なデザインだったのではと思われます。(シチズンのサイトでの紹介はこちら。1969年のグッドデザイン賞も受賞しています。こちら。)
CITIZENのロゴはイタリックのかかった四角っぽいロゴで、その下にエレキな時計であることを自己申告するElectric Watchの表記があります。
正面から。このまるまるとしたケースデザイン、リング上に印刷されたインデックスバー等、カッコイイです。リューズはかなり埋め込まれているので引き出しにくいのですが、電池駆動で1年はノンストップで動き、正確でもあることから、そう操作しないだろ的な意思表示ですかね?
私のこの所有物は残念ながら不動なのですが、外観はとても綺麗で、オリジナルのベルトも付いています。
ベルト裏面拡大。ベルトには見にくいのですがCitizenの型押しがあり、尾錠にもCITIZENの表記があります。
裏蓋だけかなり使用感があります。裏蓋の開閉には専用の工具を使用します。
で、このX8にはいくつかバリエーションがあり、私は3つ程所有しています。まず下のこれは上記のもののベルトを外した状態。おそらくこのモデルが最初期モデルかと思われます。とりあえずここではAモデルと呼びます。
下のこれはElectric Watchの表記が6時位置のX8の上に移動したタイプ。しかもElectric(エレクトリック)がElectronic(エレクトロニック)に変わってWatchの表記が無くなっています。また12、3、6、9時のインデックスの太い指標の印刷の両脇が最初期型のAモデルは細い溝が掘ってあったのですが、このモデル以降、コストダウンからか、溝は無くなり細い線の印刷に変更になっています。これをBモデルとします。
これはさらに次のバージョンかと思われるタイプ。シチズンのロゴが通常ロゴになっており、秒針の後端の形状が前のモデルと異なります。webを検索すると上のモデルでもこの秒針のものもある様なので、このあたりは謎です。(オーバーホール等で交換された可能性もありますし。)これをCモデルとします。このCモデルのみモジュールが生きてて元気に動いています。
3つ一緒に撮影。まぁ、微妙な差ですが、やはり最初期のAモデルが一番良いです。この後この時計はChrono Master名が印刷されCHRONOMETER表記のあるモデルも出るなど、マイナーチェンジをされていきます。
インデックス部の違い。上は最初期のAモデル。赤丸部(3、6、9時部も同様です。)の黒い指標の両外側には溝が掘られていますが、下の後のB、Cモデルの黒い指標の両外側は細い線の印刷に変更され、溝は掘られていません。コストダウン的なマイナーチェンジですね。
で、今回、不動の最初期のAモデルにCモデルの動くモジュールを移植し、蘇らせることを試みました。まずはAモデルの裏蓋を専用工具で開けた状態。一応バッテリー交換もしてみましたが、やはり動きませんでした。
移植に使用するのはCモデルですが、ついでですのでBモデルも開けての記念撮影。Cモデルのモジュールのみ(画像左下)ムーブメント周囲の金属枠がシルバー色でした。
で、A、Cモデルのバラシに入ります。モジュール交換なので、文字板、針も外す必要があり、ちょっと緊張します。文字板の下には透明の絶縁シートがありました。
で、Aモデルの文字板と針をCモデルモジュールに付け、それをAモデルのケースに入れようとしたところ、なんと入らず!良く見てみるとケース内の内壁にはピンが立っており、そこに対応したミゾがモジュールの枠に彫ってあり(下の画像の丸内)、
なんと、そのピンの位置がAモデルとCモデルで違う位置にあり、違うモデルのモジュールを入れることは不可能になってました。何故に違うモジュールが入らない様になっているのでしょう。私の様ながっちゃんこ防止ですかね?・・・で、結局モジュールと一緒にケースもCモデルのものを使用することとしました。(ということは結局CモデルにAモデルの針と文字板と裏蓋を移植する状態。)まぁ、Cモデルのケースもかなり綺麗なのでよし、です。
ちなみにバラす時に参考にしたのがこのCITIZEN 腕時計総合技術解説書です。
シチズンの腕時計に関する個別の詳細な解説がされています。X8に関してだけでも22ページも解説されています。バラす前に文字板の止めネジが何処にあるのか等の予習ができます。
概要、電磁テンプの動くしくみ、バッテリー交換方法(これにはバッテリー交換時はまずリューズを引き電源を切ってから交換、とあります。)、可変抵抗操作による振り角の調整方法、バラす手順等々、詳細に記載されています。
・・・ということで、めでたく動く様になった最初期モデル。オリジナルのベルトは永久保存することにし、とりあえず手元にあったシリコンベルトを付けてみたのですが、意外といけてます。
マットでしなやかなシリコンベルトがまるまるしたケースデザインに良く似合ってます。
以上、シチズン初の電磁テンプ時計、X8のご紹介でした。
2020.3.7. 追記・・・ワールドフォトプレスのムック本、国産腕時計博物館に掲載されているシチズン資料室所蔵の同モデルの画像を見てみると上記のどのモデルとも異なる秒針が付いていました。しかし、この軸の部分が長方形をしている秒針のものはざっくりググっても出て来ず、シチズンのサイトの秒針は上記Cモデルの軸の部分が円形のものですし。。。販売中でもいくつかバリエーションがあったのかもですね。以上、この時計の秒針のバリエーションの追加情報でした。